ハングルの詩のある風景: 素月と鉄橋 第15回
歌樽先生:「얼결에 띄워 건너서서」では何を浮かべて渡ったのかについては書いていないのですがこれはなぜでしょうか。
詩子アナ:船と書くと船が、ヨットと書くとヨットが取り締まりの対象になるかも知れないので、それとなく何かで向こう岸に渡ったことが分かればいいと思ったからでしょう。それから、「얼결에」ですから、何かバタバタしていて、何でなければいけないということもないでしょうから。
歌樽先生:するどい深読みが出来るようになりましたね。
詩子アナ:Oh!ヤッター。褒められるとは思っていませんでした。当時は本来考えなくてもいいようなところで神経をすり減らしていたんですね。
歌樽先生:そういう時代でしたから、何もかも大変でしたね。
詩子アナ:3行目の「숨그르고」はどんな意味ですか。
歌樽先生:「숨 가누다:息を整える」の平安道の方言だそうです。これで、2つの「남의 나라 땅」というタイトルの詩を訳す準備ができたようですね。
詩子アナ:あの、一つ気になっていたのですが、「枯れすすき」の歌の歌詞のところは日本語のままなんですか。
歌樽先生:ああ、「忍従」という詩ですね。原文は「船頭小唄」の出だしの部分を日本語のまま「オレハ河原ノ枯ススキ」と書いてあります。朗読では韓国語に訳したものを使っています。聴いてみましょう。
인종(忍從) (김소월 詩) : 네이버 블로그 (naver.com)
詩子アナ:「나는 냇가의 마른 갈대」と訳していましたね。
歌樽先生:「나는 냇가의 시들어 버린 갈대」と訳したものもあります。素月のこの詩では文脈からこれが歌であることがよく分かるように書かれています。
第18問:「枯れすすき」は「船頭小唄」というタイトルで有名になりましたが、素月のこの歌についての評価は次の内、どれでしょうか。
1) 優 2) 良 3) 可 4) 不可
詩子アナ:さっき聴いた「忍従」という詩の中に、こんな歌、歌うんではないといったニュアンスの内容があったようですので。
第18問:答は、4)不可、です。
歌樽先生:そうですね。「私たちには私たち祖先の歌がある」とも言っていますね。
詩子アナ:ススキは「갈대(葦:あし)」ではなくて、「억새(薄:すすき)」ではないのですか。
歌樽先生:河原だから、水辺ということで「갈대」だと考えたのでしょう。韓国の年配の人であれば歌手の朴一男(박일남)といえば「갈대의 순정:葦の純情」とすぐ出て来ます。テレビではこの歌の背景に葦が映し出されることが多いのですが、実は葦か薄どちらかよく分かりません。ちょっと聴いてみましょう。
추억의 노래 #갈대의純情/♬박일남♬(1966年) #Aegisub Effect – YouTube
詩子アナ:いろんな葦が画面にでてきますが、「갈대(葦:あし)」は白くないようですね。素月の詩の「엄마야 누나야(オンマヤ ヌナヤ:母さん、姉さん)」に「갈잎의 노래(葦の葉の歌)」という歌詞がありますが、これを「억새:ススキ」に読み替える訳にはいきませんね。
歌樽先生:「アシ」と「ススキ」はよく似ていますが、イメージはずいぶん違いますね。この違いを知りたいようですね。
詩子アナ:そういう訳ではないのですが、友達から「엄마야 누나야(母さん、姉さん)」の詩碑の写真が送られてきまして、ちょっと気になっていましたので。